English 英語気持ちZenyoji

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2014-11-13
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英語を勉強する前に知っておくべき、勉強のコツを伝える絵本です。

旅先で出会った日本人の初老の紳士。
外国で暮らして25年になるが、来た時はまったく英語ができなかったという。
主人公もひとり旅で英語に苦労していたので、紳士にどのようにして英語を覚えたのか尋ねた。
すると。「英語の気持ちになるコツが……」と彼にそのコツを伝授してくれる。
読むだけで、不思議と英語ができるようになっちゃう絵本。

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当時の私は、トラベル英会話の本に載っているような決まった表現以外、英語はほとんど喋れなかった。人並みに英語の勉強はしてみたし、海外への憧れもあったから、自分なりにいろいろ試してはいたけれど、ど~しても身にならなかったんだ。英語が言葉というよりは物理方程式のような感じがしていた。

それで、ぶっつけ本番で『英語を話さなければならない状況に行けば』なんとかなるかと思って、ひとり旅に出たのだ。しかし、その根拠のない期待は、やはりただの妄想にすぎなかった。

でも、それも彼と会うまで、だった。

旅に出て1週間目のことだった。私は長距離列車に乗った。
シーズンオフということもあり、コンパートメントと呼ばれる列車の個室は私ひとりきりだった。英語ができないのだから、ひとりの方が気まずくなく、ありがたかったが、やっぱり、誰かとお喋りしながら旅ができたら、どんなに楽しいだろうと思っていた。
お昼をちょっと過ぎたころだろうか、列車は小さな駅に停車した。そして10分ほどして、なんの前触れもなくガクンと揺れ、また動き出した。

暫くして、車掌に礼を言う声が聞こえ、コンパートメントのドアがガラガラっと開いた。
「こんにちは。ここいいかな? 車掌さんがね。
日本人がひとりで乗ってるって、教えてくれたもんだから」
入って来たのは、とても気さくな感じの紳士だった。

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久しぶりに日本語が話せるうれしさで、私はその紳士といろいろな話をした。
彼は新聞を読みながら、この国のニュースを話してくれたりもした。
紳士はもう25年も海外暮らしをしているという。
私も英語が話せたら、海外で暮らしてみたいと言った。

「僕もこっちへ来たときはまったく英語が話せなくて、本当に困ったよ。もともと英語が苦手だったんだけどね。あのころを思い出すと笑ってしまうよ。何をそんなに難しく考えていたんだろうってね」
意外だった。聡明な印象だったから、きっと英語もペラペラで海外へ出たんだろうと思ったからだ。

「ぜんぜん。それこそ、テーブルのスペルすら怪しかったよ。とにかく苦手だったんだ。しかし、やっぱり言葉が話せないと、いい仕事は貰えないし、友達もできない。それで、必死に勉強したんだ。それでも、なかなか成果はでなくてね、苦労したよ。
ところが、ある日、自分が『とっても簡単なコトを無視していた』ってことに気づいたんだ。それが分かってから、グングン解るようになったんだよ」

私は思わず身を乗り出して、その秘訣を教えて下さい! と迫った。
だって、私もまったく同じだったからだ。


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「そうだな。どうやって説明しようか……」
そう言って紳士は暫く車窓眺め、考えていた。

私はその横顔を固唾を飲んで見守った。
やがて彼は、ゆっくりと話しはじめた。

「それはね、勉強方法じゃないんだ。
コツかなぁ。英語の気持ちになるコツ」
コツ……。
「あなたはコレを読めますか?」
紳士は新聞の広告を指さし、僕に渡した。
そこには、こんな文章が書いてあった。

If you are a first-time visitor, come see the Empire State and Chrysler Buildings, the Statue of Liberty, Rockefeller Center, Times Square, the Bronx Zoo, Staten Island Ferry, Brooklyn Bridge and all our other world-famous attractions. If you have been here before, there is always another neighborhood to explore, another restaurant to try, another Broadway show or museum to see; another don't-miss cultural performance or sporting event.

(http://www.iloveny.com/ourcities/CityProfile/より)

僕は一瞬で無理だと思った。とにかく長すぎる。
正直に、分かりませんと答えた。

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「それじゃあね。今まであなたが学んだコトは、とりあえず全部忘れて。
頭を空にして聞いて欲しいんだ。
というのも、これから話す『英語の気持ちになるコツ』は、英語の勉強をはじめるための準備みたいなものだからね。だから、5文型や過去完了形だのとということは、今はいっさい必要ない。むしろ邪魔なんだ。
このコツが脳に染みこむと、『英語の気持ち』が分かるようになる。そうすると、英語が言葉として感じられ、簡単なコトなら自然に話せて、読めるようになるんだよ。そうなったら、一から勉強しなおしてみるといい。
きっと、成果が出るから。
じゃあ、いいね。頭を空にして。何も疑っちゃダメだよ」


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「まずは《主語と動詞》だ。

英語はとにかく《主語と動詞》が大事な言葉なんだ。
それ以外はとりあえず無視しちゃおう。
いいかい《主語と動詞》。つまり「誰がどうした」。これだけだよ。

日本語は、主語はあまり重要じゃない。《目的語と動詞》の言葉だからね。
だから、英語を話そうとしても、読もうとしても、ついつい「何をどうした」ってことばかり気にしてしてしまう。それは『日本語の気持ち』だ。それが、英語を分からなくさせている理由なんだ。
英語を話すなら『英語の気持ち』にならないといけない。
そのために大切なのは、《主語と動詞》まずはこれだけに集中する。いいね。これが大原則なんだ。

あなたはその広告の文章をぱっと見て、すぐに『分からない』と決断した。それは、文章の何処を読めばいいのか分からなかったんじゃないかい?」

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「じゃあ、まず《主語と動詞》にしっかり意識を集中する練習だ。やってみよう。
親指を立ててみて。……これが《主語》。
《主語=誰が》を考える時には必ずこのジェスチャーをするんだ。そのクセをつける。
なんでかって言うと、いざ英語を話そうと思うと、どうしても《目的語=何を》に意識が行って、その結果、頭が真っ白になったりしちゃうからね。
そんな時、この親指を見て《主語=誰が》を思い出す。話そうとしている話題の主語は何かなぁ……ってイメージするんだ。できるだけ日本語で考えないように。
そして、《英語は大事なことが先に来る》んだ。主語はとっても大事だから、たいてい主語は前に来るんだよ。

ついでに、言っておくと、英語を話そうとして頭が真っ白になるのは、あなたの脳がしっかり英語を意識している証拠でもあるんだ。
つまりね『日本語の気持ちでは、英語には対応できません』って理解して、思考を停止しているんだ。だからそれは、悪いことじゃないんだよ」

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「次に人差し指を伸ばして。これが《動詞=どうした》。
主語の次に大事なのが《動詞=どうした》だからね。たいてい主語の次に動詞が来る。

どうして《主語と動詞》が大事かっていうと、英語はこのふたつの単語で文章の方向性が決まってしまうからなんだ。
つまり《誰がどうした》というのが英語の文章の基本の基本だってことだよ。

ポイントのまとめ
★英語を話す時は、親指で《主語=誰が》、人差し指で《動詞=どうした》のジェスチャーをしながら《主語と動詞》から言う。
★英文を読む時、聞く時には《主語と動詞》を見つけて、文章の方向性を理解する。
★《主語と動詞》はたいてい前の方にある。

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「例えば『今日、電車でエドモントンに行きたい』と言いたいなら、主語と動詞はなんだろう?

主語は《 I 》、動詞は《 want go 》だよね。

そのあとは適当に《Edomonton》だけ付ければ大丈夫。
なんで大丈夫かっていうと、相手には『あなたが行きたい』という『話しの方向性』がしっかり伝わっているからなんだ。これがスッゴク大事なんだ。

方向性さえしっかりしていれば、たとえ正確に伝わらなくても、相手はあなたが『何処へ、何時、どのように行きたいのか』か考えてくれるはずだ。
だけど、これがもし日本語の気持ちで、《何をどうした》の順序で《Edomonton》《want go》とか言っちゃうと、相手は《Edomonton》が主語だと思いこんじゃうんだ。だから『エドモントンが行きたい』という間違った話の方向性が決定されてしまうんだよね。もちろん、エドモントンという町は動いたりしないから、ちんぷんかんぷん。
さぁ大変。『私が行きたい』という本意とのギャップを埋めるのは、なかなか大変だ。」

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「さっきも話したように、僕らが英語が分からないのは、日本語で考えてしまうためなんだ。だから、意識して『英語の気持ち』になれば、少しずつ解決するよ。

『日本語の気持ち』と『英語の気持ち』の違いは、《何をどうした》と《誰がどうした》なんだ。たいした違いじゃなさそうだけど、無意識だからこれはすごく大きなことなんだよ。

『日本語は主語を省略する』とよく言うけど、日本語の気持ち的に考えると「主語がいらない場合が多い」んだよね。特に親しい人同士の会話では。
例えば、昨日走った高速道路の話しをしようとすると、日本語の話しはじめは
『昨日、高速道路を走ったんだけどね……』となるよね。

この場合の主語は何だろう?
「高速道路」じゃないよね。走ったのは「自分」だ。
日本語の気持ちのまま《highway run》なんて言っちゃうと、相手は『高速道路が走った』と聞こえてビックリしてしまう。

英語の気持ちでは、走ったのは私=《 I 》で、ジョギングじゃないからrunではなく、運転した=《drove(driveの過去形)》だよね。
こんな風に、主語の普段気にしていないことも多いから、注意しないといけないね」


私は、英語についてこんな風に考えたことはなかった。英語の基本は5文型だとばかり思ってたから。
たしかに英語を話そうとするときでも日本語で考えてるし、読むときも必至に日本語に訳そうとばかりしているかも……。
そして、たしかに、日本語だって文型を考えながら話したり、読んだりしないよね。伝えたいことがあって、それを話し、伝えたいことは何かと思って読むのだから。

そうか《主語と動詞》で伝えることを言うのが英語の気持ちなんだ。



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「次に、英語の動詞はどのくらいの種類があると思う?

中学から山ほど覚えただろうけど、
実は、たった2種類なんだ。

だけど、この2種類は決定的に区別されるんだ。
それは《be動詞》と《一般動詞》だよ。

《be動詞》っていうのは知ってるだろうけど、be、am、is、are、been、was、wereなどだね。
《一般動詞》はplay、 run、 feel、 thinkなど山ほどある普通の動詞だ。

この2種類の差は
★《be動詞》の文章=主語の状態を話す文
★《一般動詞》=主語の行為を話す文
っていうことなんだ。
英語の文の基本はこの2種類しかない。これが、とっても重要なことなんだ」


それで《be動詞》っていうのががるのかぁ! 思ってもみないことだった。状態を言う時と、行為を話す時はべつなんだね。

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「じゃあ、さっきの広告の文章を読んでみようか。
ちょっと長いけどね。

★主語を○で囲って、それに続く動詞を□で囲ってみる。そうすると、長文でも、とっかかりが見つかるはずだよ。
★大事なポイントは《主語と動詞》の部分だけだ。それで文章の方向性がつかめるはずだ。

初めの文章:
If you are a first-time visitor, come see the Empire State and Chrysler Buildings, the Statue of Liberty, Rockefeller Center, Times Square, the Bronx Zoo, Staten Island Ferry, Brooklyn Bridge and all our other world-famous attractions.

Ifが先頭にきているから『もしも』っていうのが大前提のお話だ。そして、ここの主語はyouで動詞はareだね。だから『もしも、あなたがこんな状態なら』という文章だ。

次の文章:
If you have been here before, there is always another neighborhood to explore, another restaurant to try, another Broadway show or museum to see; another don't-miss cultural performance or sporting event.

これも『もしも』が大前提で、主語がyou、動詞が have beenだ。この場合のhaveは経験を持っているってことで、beenはbeの過去分詞形だから、『~状態だったことがある』という意味だ。そして一般にhave beenは『経験したコトがある』という意味になる。だから『もしも、あなたが~を経験したコトがあるなら』という文章だね。

じゃあ今度は、細かく見てみよう。

初めの文は『もしも、あなたがこんな状態なら』だよね。
どんな状態かって言うと、次に書いてある
《a first-time visitor(はじめて訪れる客)》だったら、だ。
つまり『もしも、あなたがa first-time visitorなら』ということ。
そうなら何だって言うと、次に《come see(来て見て)》とあり、何を見るかっていうのが、その後にズラズラと並んでいるわけだ。この名所からすると、NYへのお誘いだね。

その次の文章は『もしも、あなたが~を経験したコトがあるなら』で、何をしたことがあるなら?っていうと、次に書いてある
《here before(ここ、前に)》つまり『もしも、あなたが、前にここに来たことがあるなら』ということだよね。
だったらどうなんだって言うと、『 , 』以後は《there is》と別の文章がドッキングしている。there『そこは』、is『状態だ』。どんな状態かっていうと《always(いつも)》 、《another neighborhood to explore(その他、近所に、探索するもの)》……と見どころが続くわけです。

なんとなく分かって来たら、今度は気持ちを入れて英文を読んで見てごらん。

be動詞と一般動詞の違いにある気持ちをね。言葉としてグッと味がしてくるはずだよ。ちょうど、日本語を読んでいるように、雰囲気なんかもつかめる感じがしないかい? 例えば、注意書きなのか、友達の手紙なのか、おすすめしている感じなのか。

ザラ訳:
あなたが初めての滞在なら、行って見よう、エンパイアステートビルやクライスラービル、自由の女神、ロックフェラーセンター、タイムズスクエア、ブロンクス動物園、スタテン島フェリー、ブルックリンブリッジ、そして全ての私たちの世界で有名なアトラクションへ。あなたに経験があるなら、そこにあります、いつも近くに探索する他の区域、試す他のレストラン、見る他のブロードウェイのショーや美術館;他の見逃せない文化的なパフォーマンスやスポーツイベントが。


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「どうだい、少しは言葉として感じらるようになったかな?

とにかく《主語と動詞》から入ることが、とっても大事なんだ。

それだけでも、英語の気持ちになれるはずだ。

あとは、たくさん読んで、たくさん話して、たくさん聞いて、慣れることだ。

できれば、日本語抜きでね。

翻訳しようとすると、引っかかるところが増えちゃうからね。

英語とイメージだけで、経験を増やして。次に今までやってきた勉強をもういちどしてみるといいよ。ビックリするほどよく分かるから」

[#1 End]

このストーリーは未出版です。大人向けの絵本として出版する会社を求めています。